敵のことを知る

ここまでを考えていくと、遅老遅死のためには沖縄や長野に引っ越しをしなければいけないのでしょうか? あるいはフンザやコーカサス地方のような、標高の高い場所で仙人暮らしをしなければならないのでしょうか。いえいえ、そんな他力本願では長寿はかないません。それらは条件付けに過ぎません。問題は、みなさんの一人ひとりが遅老遅死を心がけ、毎日の生活で実践することなのです。他力本願ではなく、自力で長寿を成し遂げようとすることが大事なのです。言い方を変えると、あなたの大好きなその場所にいながらにして遅老遅死は達成できるのです。遅老遅死を達成するためにはどうするか。それにはまず、人は一体どういう病気で死ぬのか、それを知らなければなりません。人生という長い長い勝負を脅かす、敵のことを知るのです。わが国は現在、世界の最長寿国(平均寿命¨男性七八・〇七歳、女性八四。九三歳)となっています。

 

 

ちなみに第二位にはスウェーデンやアイスランド、スイスなどが同率で並ぶ状態で、第二位が多いせいで七位に並ぶのがフランスやカナダなどです。まことに喜ばしい限りではありますが、その一方で肥満、糖尿病や高脂血症、高血圧症という、いわゆる「生活習慣病」が急増しているのも事実です。ということは、裏を返せば皆さん病気と闘いながら生き延びているという事実があるのではないでしょうか。いくら長生きしても、病気と闘いながら、あるいはその後遺症に苦しみながらでは楽しくありませんよね。
「遅老遅死」を具体的に説明すると、
一¨誰でも死にたくはない。だから、老いを遅らせて死を遠ざける。
二¨老いを遅らせるとは、いつまでも若々しく生きることである。
三¨そのためには、長寿の秘訣を知る必要がある。
四¨長寿の秘訣とは、生活習慣を考え直すことだろう。
五¨生活習慣を改めることとは、生活習慣病を克服することでもある。
六¨生活習慣病を克服できれば、それだけ長い間活発に人生を楽しめる。

 

 

おわかりでしょうか、生活習慣病を克服することにより遅老遅死は達成されます。左のグラフは『病因論』といって、非常にシンプルに病気のことを分類したものです。病因論によると、病気には遺伝的に生まれ持ってきたもの、つまり「内因性」のものと、「外因性」のものがあるとしています。例えば内因性の疾患に、血友病という病気があります。この病気は、人の遺伝子(正確には性染色体Xに異常がある)には外傷などで出血したときに血液を凝固させる第[因子というのがあるのですが、遺伝的にこの第[因子が作れない人たちが血友病(血友病Aといいます。ほかにBもあります)の患者さんなのです。血友病の患者さんがこの第[因子を不適切な輸血製剤(非加熱製剤)から補充していたために起こってしまったのが薬害エイズ事件です。本当にお気の毒な話です。また、女性には性染色体Xが二つあるため、女性が血友病を発病することは「極めてまれ」といえます。次に、外因性の病因としては、例えばインフルエンザ・ウイルスを挙げましょう。毎年冬になると高熱や関節炎を引き起こし、脳症や合併症による肺炎などで亡くなる方も珍しくない怖い病気です。しかしこれは予防注射をするとか、マスク、うがい、手洗いをすることで避けることができます。ちなみに私はインフルエンザの予防注射をしなくても、ここ十年かかつたことがありません。これは毎年多くのインフルエンザの患者さんを診ているうちに、私の体の中にインフルエンザ一ウイルスに対する強い抗体ができているためだと思います。インフルエンザだけではなく、この五年間ほとんど風邪らしい風邪にもかかっていません。いろいろな風邪に対しても自然に抗体ができているのだと推測されます。この抗体を作るを免疫力といいますが、この免疫力も遅老遅死にとつては大きな武器になります。この免疫については後ほど詳しくお話しします。


このページの先頭へ戻る